1225話(2019年9月21日 ON AIR)

「時をかけて乙女会」

作・たみお
出演・東千紗都
藤井颯太郎
ちんちんちんと、カップを鳴らす乙女長
だいぶご高齢ながら、パールのネックレスをいつも欠かさない上品な女性。
ひでこ
みなさま、お揃いになって。
たかこ
にい、さん、しい・・・ええ、秀子さん。みなさま、おそろいになってるわ!
ひでこ
どなたもかけてなあい
たかこ
あのね、あきこさんは、今日はぎっくり腰。でもちゃんと連絡してくださったから。
ひでこ
よろしい。では、皆様おそろいですね。
み な
はい!
たかこ
では、第721回、乙女会を始めます。
ちんちんちんちん・・・とカップがいたるところで鳴る。
ひでこ
みなさまお元気ね。音でわかるのよ。
さて、今日の議題は、乙女会のニューリーダーについて。
たかこ
ニューリーダー? 何をおっしゃるの秀子さん、
あたしたちのリーダーはいつだってあなたじゃないの。
そうよそうよ、というざわめき。
ひでこ
みなさま静粛に。・・・わたくしね、この秋に米寿を迎えるの。
たかこ
おめでたいことじゃない・・!
ひでこ
ええ。誇らしいわ。
まさかここまでみなさんのお顔を見ながら、生きていけるなんて、
あの頃は思いもしなかった。でもね・・
もうそろそろ、ここではないどこかにゆきたいわ。
たかこ
・・・どうしてそんな・・・
ひでこ
まあ! つまらない想像はよしてちょうだい。
そういうことじゃないの。ここではないどこかよ!
たかこ
ブラジル・・・とか。そういうこと?
ひでこ
そういうこと!  みて!
機械音がする。
タブレットからの映像照射のような。 
ひでこ
2020年、つまり、来年ね。ある事業が秘密裏に実施されます。これはその資料。
たかこ
まあ、これは・・・不二子さんの・・・
ひでこ
みなさま、乙女会の秘密厳守はきっちり守ってくださるわね。
あすこに座っていらっしゃる不二子さんは、経産省の元幹部。
そのおとなり、康子さんはロシア宇宙開発局にお勤めだった。
ご存知晴子さんの旦那様はアラブ領事館にお勤め。
おつけものから、国の最高機密まで握る、それがあたくしたち乙女会。
たかこ
何をしようっていうの、ひでこさん。
ひでこ
米寿よ。賭けに出るのに最後の年と言ってもよいでしょう。
たかこ
まさか・・
ひでこ
タイムトラベルよ。 いま、あと一人の乗り手を求めてらっしゃるの!
たかこ
乗り手? でも、だって、時間旅行は仮想現実の範疇と・・
ひでこ
そうね、今を知ってこそのわたくしたちですから、
昨年の乙女会ではそうお話しました。
でもいまは、この身すべてを運べるようになった、かも、しれない。
その賭けに乗りたいの。
たかこ
でも、それって、つまり、でも!
ひでこ
ええ、そうよ。戻れない、かも、しれない。
存分に生きたからこそ、できる旅とはこういうこと。これは、わたくしの得た権利だわ。
たかこ
ひでこさん。
ひでこ
とめたりなんかしないわね。たかこさん。みなさん。
ちんちんちんちん・・・とカップがいたるところで鳴りはじめる。
ひでこ
ありがとう。音でわかりますよ。ニューリーダーは、わたくし不在時にお決めになって。
たかこ
・・・もしも、姿が見えなくなっても、ひでこさんは、生きてらっしゃる。
そういうことね。
ひでこ
そうよ、わたくしの生きた証拠は永遠に、みなさまとともに。では、ごきげんよう。
おわり。