1244話(2020年2月1日 ON AIR)

「俺の知らないあの子の苦労」

作・福谷圭祐
出演・大熊隆太郎
のたにかな子
印刷会社勤務の村田、仕様書を手に取る。
なんだよこれ。また瀧岡、ふざけやがって。
あ、村田さん、それお願いしたいです。
おい、お前、待て。ちょっと座れ。
あ、いえ。
座れよ。
あ、いや。
お前な、こんな納期、急に言われたってできねぇよ。
あっ、無理ですか…?
なんでお前、こんな無茶なスケジュールになるんだよ。
先方がどうしても年内に欲しいみたいで。
だったら年内なら年内で、もっと前もって段取り組めって。
はい、あの、稟議がなかなか通らなかったみたいで。やっぱり人が多いから、
知らねぇよ、向こうの会社の都合は!
はい。
お前はさぁ、うちの会社の人間なんだからさぁ、相手の都合ばっか合わせてないで、
うちの現場のこともちゃんと考えてやってくれよ!
はい。
これも、もうできるって言ってあんだろ?
できるというか、そうですね。
だったらやるしかねぇけどさ。急なんだよ、お前の案件は。
すいません。
お前あれだろ、斎藤とか同期だろ? あいつとかさ、「今こういう話があって、
たぶん判型こんなもんで部数こんなもんで、フィックスしたらまた伝えます」とか、
世間話ついでにちゃんとこっちに知らせておいてくれんだよ。
はい。
お前そういうの全然ねえだろ? なんでだよ?
はい。
そんでいきなり仕様書だけポンって置かれててよ。
はい。
なんでこういうことになるんだよ。
すいませんでした。
なあ。
はい。
いい加減な仕事してんじゃねぇよ!
ごめんなさい、ちょっとでも今、パンツ履いてなくて。
……あぁ?
すいません。本当に、すいませんでした。
…まあできねぇ量じゃねぇから、機械割り変えて対応はするけど。
はい。
もっと余裕ある納期にするか、切羽詰まった案件になりそうなら、
なりそうな時点で一声かけてくれ。次からは。
はい。
なんでパンツ履いてねぇんだよ?
いえ。
どうしたんだよ?
(泣きだす)
おいおい、いや。なんだよ。怒鳴って悪かったよ。
大きな声が、怖くて。
わりぃ、わりぃ、わりぃ。泣くなよお前。そうだよな、パワハラだよな。
(泣きながら否定する)
いやいや、わりぃわりぃ。お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。
(「ロッカーのカギが」や「水道がおかしくて」など発しているが、泣き声で不明瞭)
どうしたんだよお前、わかんねぇよ。あんまり聞くとセクハラか?
(泣きながら否定する)
仕事してくれりゃいいだけで…。悪かったよ。怒鳴る必要はなかったよな。
お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。わりぃわりぃ。
納期間に合うから。大丈夫だから。
ありがとうございます。
おう、わかったよ、行け。お前、階段気をつけろよ。なんなんだよお前。
おい、瀧岡、しっかり歩け! 転んだらお前、お前なんでパンツ履いてねぇんだよ。
おい、近藤ちょっと瀧岡についてってやってくんねぇか。
わかんねぇ。俺あいつわかんねぇよ。
END