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1246話(2020年2月15日 ON AIR)
「本命はどっちだ?!」
- 35歳OL修子の虚しいワンルームマンション。
1月30日、午後八時。修子が帰宅し、買ってきたチョコBをテレビ横の棚に置いた。
- チョコA
- 誰だ、お前は。
- チョコB
- あら、先住民がいたとは、驚きだわ?
- チョコA
- 先住民とはなんだ。この俺様に向かって。
- チョコB
- 失敬。俺様。
- チョコA
- 名を名乗れ!
- チョコB
- ふふん。銀座・パティスリーOTIHOのシャンパン生チョコ・20個入りよ。
- チョコA
- 生チョコか…。
- チョコB
- そちらは?
- チョコA
- 見ればわかるだろう。
高級チョコレートGOJIBAのバレンタインアソート・12粒入りだ。
- チョコB
- ほほう…。
- チョコA
- わかったな?本命は、俺だぜ。
- チョコB
- あたしが義理だとでも?
- チョコA
- 会社で配る用かもな。
- チョコB
- あたしの値段を聞いても、それが言えて?
- チョコA
- おいくらだ。
- チョコB
- 4800円よ。
- チョコA
- 同じ値段だと…?
- チョコB
- ええっ?あたしの方が高いと思ったのに…!
- チョコA
- こりゃあれだ。どっちかは自分へのご褒美チョコだな。
- チョコB
- 昨今のはやりね。
- チョコA
- 本命チョコは、俺だ。
- チョコB
- どうだか。
- チョコA
- 泣くのは、お前だぜ!
- チョコB
- そして、バレンタインまであと一週間と迫ったある日。
- チョコA
- (泣いている)
- チョコB
- どうしたの?
- チョコA
- 俺は…本命じゃないのかもしれない。
- チョコB
- えっ?
- チョコA
- 今日…テレビでやっていたんだ。
お前…OTIHOのチョコレートが今年のトレンドだと…。 たくさんの若い女がインタビューに答えていて…みんな彼氏にやるんだと…。 ちくしょう!
- チョコB
- やっぱりね。
- チョコA
- 死んだ方がましだ!GOJIBAに生まれて、本命じゃないなんて!
- チョコB
- 子どもね。
- チョコB、たばこを吸う。
- チョコA
- お前、たばこを…。
- チョコB
- いいじゃないの。ご褒美チョコ。
男なんて、100円の板チョコと、一粒500円のチョコの 味の違いもわからない生き物よ。雑にしか食べないわ。
- チョコA
- 確かに…。
- チョコB
- それに比べて、きっとご褒美チョコは大事に食べてもらえるわ。
ねえ…チョコとして、どっちが幸せかしらね…。
- チョコA
- そんなこと言うなよ。…お前、悪い奴じゃないんだな。
- チョコB
- あんたこそ、かわいいとこ、あるわ。
- チョコA
- よせよ。
- チョコB
- バカ、勘違いしないで。
- チョコB
- そして、バレンタイン当日。
- チョコA
- 今日でお別れか。
- チョコB
- 楽しかったわ。
- チョコA
- 俺もさ。
- チョコB
- さよなら。
- チョコA・B
- …ああ!!
- なんだか感動的な音楽が流れる。
- チョコB
- さみしいわ!どこへも行きたくないわ!
- チョコA
- 俺もさ!今までこんなに好きになったチョコはいないよ!
- チョコB
- 嬉しい。あなたは罪なチョコね。私の心を溶かしたわ。
- チョコA
- もともと君は生チョコじゃないのかい?
- チョコB
- もう!
- チョコA
- 生まれ変わったらまた会おう。
- チョコB
- 絶対よ!
- 音楽がやむ。
- チョコA
- まさか、どちらも本命チョコだったとはな。
- チョコB
- ええ、まさか二人に本命チョコを渡すなんて。そして両方にフラれるなんて。
- チョコA
- またこの部屋に戻ってくるとは思わなかった。
- チョコB
- でも嬉しい。また会えるなんて。
- 足音が聞こえてくる。修子、チョコAを手につかむ。
- チョコA
- えっ?ああー!!
- チョコB
- あんた!!
- 包装紙が破られる音!
- チョコA
- わー!
- チョコB
- 食べられた!!どちらにしても、食べられる運命だものね!
- 終わり。
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