1265話(2020年6月27日 ON AIR)

「夜行バスを探して」

作・福谷圭祐
出演・のたにかな子
藤井颯太郎
夜。ここは広大なサービスエリア。
まずい。どれだったかなぁ。全然見分けがつかねぇ。
(女を見つけて)あぁ、良かった。良かった良かった。
へ?
ごめんなさい。仙台行きのバスに乗ってましたよね?
そうですけど。
いやぁ、僕も乗っていたんですよ。
あぁ、そうでしたか!
よかった、よかった!
探しにきてくださったんですか?
探しにというか、綺麗な人だなと覚えていたので。
え。
あぁ、いや、そんなことはどうでも。戻りましょう。
はい。
どこでしたっけ?
へ?
実は僕、自分のバスを見失っちゃって。いやほんと、あなたがいて良かった。
あー、そっか。
戻りましょうか。
いや、実は、あたしも自分のバスがわからなくなってしまっていて。
おっと。
そうなんですよ。
なるほど。するとこれはあれですね。詰んだってやつですね。
はい。
ひとつずつ近づいて見ていきますか。
あ、でも、ここからなら全体が見えるから、もしかしたら手を振ってくれるかも。
ああ。
ほかのバスに近づいて、知らないうちに出発されたら困るし。
たしかに。もう発車時刻は過ぎちゃってますもんね。
あたし、あのバスが怪しいと思うんですよ。
赤いラインの入った?
はい。あそこから、運転手さんが出てこないかなって。
運転手さんの顔なんて覚えてるんですか?
えぇ、すごくカッコイイ人だなと思ったので。
あぁ。
あ、いや、そんなことはどうでも。
あれ? でもあのバス、動き出しますよ?
あ、ほんとだ。え、あれじゃねぇのかな。
バスが一台、去っていく。
あれじゃないですよね?
いや、あれかなって思ったんですけど。
あれだったらやばくないですか?
あれじゃなかったかもしれないですね。
でもあれだったらどうしましょう。
しつこい。
……あっちにも、似たような模様のバスがありますよ。
あ、ほんとだ。
でも、あんな模様でしたっけ?
正直、あまり自信はありません。
僕も、全然覚えてないんです。それこそ、あなたの顔くらいしか。
あたしも、運転手さんの顔しかわかんないから。
夜、広大なサービスエリアで、
深夜バスを見失った二人の男女がお互いに記憶していたのは、
お互いの顔だけだった……、なら、ロマンティックですけどね。
なんですか?
なんでもありません。あっ、ちょっ、あれも動き出しそうじゃないですか?
ほんとだ! あれだったらさすがにヤバイ!
走りましょう!
おーい、そのバスちょっと一旦ストップ
(と、言おうとして突如やめて)(咳払い)(可愛らしい声に調節して)
ごめんなさーい、運転手さん、ちょっと待ってー。
どうやらこのバスで正解のようだ。
すみませーん!
END