1271話(2020年8月8日 ON AIR)

「40才の美容院戦争」

作・嘉納みなこ
出演・のたにかな子
藤井颯太郎
駅前にある美容院「アゴーラ・アゴーラ」。
髪を洗ってもらったばかりのタカコが鏡前の席に座っている。
タカコ
40才の誕生日、私は髪の毛を切りに来た。別に髪を切ったからって、
何かが変わるわけじゃないけど・・・。でも、なんとなく。
ナオキ
お待たせっす~!!今日タカコさんの担当させてもらいます、ナオキっす~!!
タカコ
ああ。
ナオキ
俺今日からスタイリストになりまして~!お客さんの髪切るの、初めてなんすよ!
タカコ
えっ、初めて?
ナオキ
(急にイケメン風)大丈夫。ちゃんと切れるから。
タカコ
はい・・・。
ナオキ
今日どうします?
タカコ
えっと、とりあえず、肩につかないくらいにはしたいんだけど・・・。
ナオキ
前髪どうします?
タカコ
あー、流す感じで。
ナオキ
OK。・・・イメージできた。いい感じになると思う。
タカコ
お願いします・・・。
ナオキ
ちょっと雑誌持ってきますね~!
ナオキ、鼻歌を歌いながら去っていき、再び雑誌何冊か持って現れる。
ナオキ
はい!よろしかったらこれ、読んでてくださいね~!
タカコ
へえ、この雑誌、初めてみたわ。
ナオキ
あっ、それね!40代用の雑誌なんですよ!
タカコ
えっ?40代?
ナオキ
はい、切ってきますね~!
タカコ
「働く40代のためのファッション誌『グローリー』」・・・。
ナオキ
あとこっちもいいっすよ!
タカコ
「『新しい40代』のためのファッション誌『トピックス』」・・・。
ナオキ
イマイチでした?
タカコ
いや、いいわよ、これで。・・・でもアタシ、40になったばっかりだし、
どちらかと言えば30代に近いんだよね~。
ナオキ
まあでも、時は巻き戻せませんからね!あっ、白髪ある!切っていいですか?
タカコ
はい・・・。
ナオキ
タカコさんて結婚してましたっけ?
タカコ
まだですよ?
ナオキ
そうなんだ。でもカレシはいるっしょ?
タカコ
…いないっしょ~。
ナオキ
そーなんだー!もったいない!作った方がいいですよ!
タカコ
へへへ…。
ナオキ
タカコさんならすぐできるって!
タカコ
できねえよ。
ナオキ
えっ?
タカコ
40才、なめんじゃねえよ。
ナオキ
えっ、うあっ、おおっ。(とか、焦って変な声が出る)
タカコ
こちとら、7年彼氏いませんわ。
ナオキ
そうなんすか。
タカコ
ええ。33過ぎたころからですかねえ、
周りの同年代の男たちがみな若い女ばかりを選ぶようになりましてね。
あぶれっぱなしですわ。
ナオキ
そうなんですか。
タカコ
そんで気が付きゃ40ですわ。そりゃこんな雑誌も渡されますわなあ。
ナオキ
アツシ!ノンノン持って来て!
タカコ
今さらそんな20代向け雑誌読まねえよ!
ナオキ
すいません!
タカコ
謝るんじゃねえ!とっとと髪を切るんだ!
ナオキ
ダメだ、ハサミがまっすぐはいらない。あっ、ここにも白髪が。
タカコ
あたしだって、40がこんなに厳しいなんて思ってもみなかった。20代の頃は。
ナオキ
おステキですよ~。
タカコ
いいのよ慰めは。あーあ、とんだ誕生日。
ナオキ
タカコさん今日お誕生日すか!
タカコ
そうよ。
ナオキ
ちょっと待っててください。アツシ!
ハッピーバースデーの歌が聞こえてくる。
ナオキ
♪ハッピーバースデートゥーユー~
複数の声が徐々に歌に参加する。(アツシや他のスタッフたち)
タカコ
(歌の最中に)ちょっとちょっと!やめてよ!はずかしい!
ナオキ
おめでとう、タカコさん。プレゼントとして、
今日一日僕らの中で、タカコさんを30才ってことにしますね。
タカコ
それ、嬉しくないからな!!
終わり