1272話(2020年8月15日 ON AIR)

「予告のテレパス」

作・福谷圭祐
出演・大熊隆太郎
東千紗都
ここはカフェのテラス席。
以下、脳内での会話。エコーがかかっている。
あのー。
えっ!
おっと、驚かないで。驚かないで。急に申し訳ありません。
なにこれ。頭の中で声がする。
まず、ゆっくりと左を向いてもらえますか。
左……?
男の人がいますよね。
はい。不審な男の人が、一人でミルクティーを飲んでいます。
どうも、はじめまして。
え、あれは、あなたですか。
はい、私です。今、あなたの脳内に直接話しかけています。
脳内に……?
驚かせてしまって申し訳ない。
え、ほんとにあなたですか? まったくこっちを見ませんけど。
シャイなもので、申し訳ない。あなたと目が合うと、緊張してしまうんです。
右手をあげてもらえますか?
はい。
以下、エコーが取れて、普通の声。環境音も聞こえる。
店員
お呼びでしょうか?
あ、すいません。大丈夫です。
再びエコーに。
あ、ごめんなさい。
いえいえ。
余計なことを。
大丈夫です。
それで……、これは一体?
はい。今から私、脳内ではなく、あなた自身に話しかけようと思っています。
はい。
いいですか?
え……、かまいませんけど、なんですか?
連絡先を……、聞いてみたいなと。
あ、そういう……?
はい。
ナンパですか?
まぁ、そのー。
え、これは何ですか? このテレパシーみたいなのは?
これは、……すごいでしょ?
すごいでしょ……?
へへっ…へへへっ……。
何かこう、あなたは、特別な人なんですか?
特別な人?
宇宙人だとか、未来から来たとか。実はあたしの運命の人で、
世界を救うためには今、出会っておかないといけないとか。
私は、普通の電気工事士です。
これは、ただのナンパなんですね?
そうですね。いきなり話しかけるのは、失礼かなと。
はあ。
それでは、いきますね。
あ、しかし、あの、ごめんなさい。
ムム?
彼氏がいるので。
なるほど……。
すみません。でも、このすごい能力には興味があるので……。
あれ…? 聞こえてますか…? もしもし? もしもーし?
以下、エコーが取れて、普通の声。
ぐっ……。ぐうう……。すんすん……。ううぅ……。
あの、連絡先くらいなら、いいですから!
ほんとですか!?
これ、はたから見ると逆ナンみたいで恥ずかしいんですけど。
じゃあ、電話番号言いますね。
はい。
再び、エコー。
ゼロ…ハチ…ゼロ…、
いや、すごいけど。なんなのこれ。きもいんですけど。
END