1282話(2020年10月24日 ON AIR)

「ひざまくらを買いに来た男」

作・福谷圭祐
出演・大熊隆太郎
のたにかな子
ええ、ええ。そうですね、固めの枕がお好みでしたら高反発ウレタンがおすすめです。
ポリエステルパイプもお試しいただけますし、よければあちらで実際に横になって、
高さをご調整いたしましょうか? ええ、どうぞ。斎藤さん、お願いしまーす。
いらっしゃいませー。
あのー。
はい、なにかお探しでしょうか。
実は、ここ最近どうにも眠れなくて。友人に聞いたところ、
枕が合ってないんじゃないかというアドバイスをもらって、ここに来たんです。
なるほど。そういう方、大勢いらっしゃいますよ。
よかった。
普段はどういった枕をお使いですかね?
恥ずかしい話、座布団を丸めて枕にするような男でして。
それはいけませんね。睡眠の質が下がってしまいますよ。
友人にも叱られました。それで、友人にオススメの枕を聞いてみたんです。
はい。
そしたら、「あたしのひざまくら使ってみる?」って言われて。
……ほう。
でも、枕を借りるってのも、気をつかうでしょう?
ええ。
だから、どこに売ってるか尋ねたんですけど、非売品だって言うんです。
ふむ。
ここに、ひざまくらは売っていますでしょうか。
なるほど。……お客様。
やっぱり、手に入らないものなんですかね?
いえ、手に入るか入らないかでいえば、手に入るモノではあります。
え、ほんとですか!
はい、しかし……。
ここには、ないってことですかね。
……あるかないかでいえば、あります。
えっ。
私のひざまくらですが。
お姉さんの?
ええ、売り物ではありません。
そんな。十万円でも足りませんか。
馬鹿にしないでください。
すみません。
つかぬことをお伺いいたしますが、そのご友人は女性でよろしいですよね?
はい。
お二人のご関係はどういった……?
いや、ただの友達ですよ、もちろん。だけど……、彼女と知り合ってからどうも眠れなくて。
胸が苦しいというか、なんというか。
なるほど。
不思議な存在ではあります。
彼女にひざまくらを提案されて、お客様はどうされましたか?
借りるのもあれだったんで、買い取りならいいかなと思って、
いくらでひざまくらを売ってもらえるか聞いてみました。
それはそれは。
そしたら、怒って帰っちゃったんです。
そうでしょうね。それでは、そのご友人に「お前のひざまくらで眠らせてくれ」と
頼むことをオススメします。
しかし、彼女のひざまくらを奪ってしまうなんて。
大丈夫です。彼女にも新しいひざまくらがすぐに届きますよ。
えっ。
お客様がすでにお持ちですから。グッドラック。
以下、BGMとともにフェードアウト。
そんな。……よくわからないこと言わないでくださいよ。ひざまくらはここにあるんでしょ?
そこのベッドで試すくらい良いじゃないですか!
いけません。
お姉さんのひざまくらを試させてくださいよ!
ダメです。そういう店じゃありません。
だったら何の店なんだよ。
枕の店です。
僕は枕を……!
終わり。