ラヴィーナ&メゾン STORY FOR TWO クリスマススペシャル2020
“約束のクリスマス”
第4話(2020年12月23日 ON AIR)

「計算するイルミネーション」

作・福谷圭祐(匿名劇壇)
<登場人物>
ヒカル 藤井颯太郎(幻灯劇場)
アカリ 水木たね(りゃんめんにゅーろん)
トモリ のたにかな子
テル 三田村啓示
町の人々 SFTオールスター
ヒカル
イルミネーションってなんですか。そう聞いて答えられない人はあまりいない。
ほとんどの人間は、「イルミネーションといえばこんなものだ」、と
すぐにイメージすることができるだろう。
んが一方で、イルミネーションデザイナーの知名度はめっぽう低い。
この夜を彩るありとあらゆるイルミネーションには当然、それをデザインした人間がいる。
ヘルメットのおっちゃんが適当に巻き付けたわけではないのだ。
アカリ
うわー……。キレイにできましたねー……。
ヒカル
大掛かりなイルミネーションにおいては、電気工事や建築の知識も必要となる。
例えば、グラフィックデザイナーが「こんなイルミネーションにしたい」と絵を描いたところで、
それが実現できるシロモノかどうかはわからない。重さのこと、電圧のこと、
多岐にわたる知識と経験に支えられて初めて、イルミネーションは今ここに存在できる。
この魔法のように素晴らしい光景を生み出す、光と空間の魔術師。
それが、イルミネーションデザイナーだ。
遠くで電球の割れる音。
アカリ
あれ? ヒカルさん、ちょっといいですか。
ヒカル
どうかしたか、アカリ。
アカリ
あのレンガ壁の右側、ツタが登った先のところ、電球が切れていませんか。
ヒカル
レンガ壁の……、ああ、本当だな。
アカリ
チェックしに行きましょう。
ヒカル
ああ。……この町を取り囲むレンガの壁。そこら一帯に飾られたイルミネーションたち。
たった一つの電球が切れたところで、見た目は大きくは変わらないだろう。
とはいえ、計算し尽くして配置した光の粒たちだ。
それぞれ一つひとつが、この町のクリスマスを彩ることになる。
たった一つでも、欠けて欲しくはない。それにあそこは……。
消えた明かりに近づく二人。
アカリ
あちゃー、これ、電球が割れてしまっていますね。
ヒカル
本当だ。どこかにぶつけたかな。予備はあったっけ?
アカリ
手配することはできますけど。
でも、ここは配線の都合で、あっちまで結び付けてるじゃないですか。
交換するとなると、ここから向こうまでを総とっかえしなくちゃ。
ヒカル
たしかに。今は何時だ?
アカリ
16時です。日没までに終わらせるのは、難しいかと。
ヒカル
ふうむ。
アカリ
あれ? あそこ……。
ヒカル
ん?
アカリ
なんか、女の子がこっちを見てますけど。おーい! あっ、逃げた。
ヒカル
ちょっとキミ、待ちなさい! アカリ、追え!
アカリ
はい!
女の子を追う二人。
アカリ
つ・か・ま・え・た!
トモリ
ごめんなさい! ごめんなさーい!
アカリ
泣かないでよ、別にとって食べやしないから。
ヒカル
余計に怖がらせることを言うなよ。……どうして逃げたの?
トモリ
だって、だってぇ……。
アカリ
電球、割っちゃった?
トモリ
二人が、ずっと頑張ってるのを見てて。完成するの、ずっと楽しみにしてて。
今日、はじめて電気がついたから、嬉しくて。
アカリ
うん。
トモリ
それで、高い所から見ようと思って、壁に登ったら……。
ヒカル
手、見せて。……よかった、ケガはないね。どこも痛くない?
トモリ
うん。
ヒカル
電球を割っちゃったことは許す。でも、危ないから、もうあんなところに登っちゃだめだよ。
トモリ
うん。
アカリ
ヒカルさん優しー。子どもに甘ーい。
ヒカル
バカ。こっちの責任でもあるんだ。実際、あの壁が一番登りやすい。
子どもが手を伸ばす可能性も考えるべきだった。
アカリ
たしかにそうでしたね。あたしも考えが及んでなかったです。すみません。
トモリ
あ、お父さーん!
ヒカル
お父さん?
テルが近づく。
テル
トモリ、勝手に動き回ったらダメだろう。
トモリ
ごめんなさい。
テル
すみません、うちの子がなにか?
アカリ
実は、イルミネーションの電球を一つ、割ってしまって。
テル
ええ! 申し訳ございません。
ヒカル
いえいえ。子どものやったことですから。
テル
実は、トモリは今日が誕生日なんです。だからはしゃいでしまっていて。
アカリ
そうだったんですね。
テル
もちろん、弁償させていただきますので。
ヒカル
結構ですよ。実は電球一つとはいっても、交換となるとあのあたり全て交換することになるんです。金額も作業も、結構大変なことになるので。
アカリ
もう日が落ちるので、時間もありませんしね。
テル
本当に申し訳ない。
ヒカル
それに、誕生日ということなら、ちょうどあそこは……。
テル
何か?
ヒカル
いえ、こっちの話です。……トモリちゃんっていうの?
トモリ
うん。お父さんはテルっていうの!
テル
はは。どうも。
ヒカル
トモリちゃんは、どうしてあそこに登ったのかな。
アカリ
え、一番登りやすいからじゃないんですか?
トモリ
えっとね、あそこから見るのが、一番綺麗だと思ったから!
ヒカル
一番?
トモリ
あ、でもね、本当はもっと高い所から見てみたかった。
テル
危ないからダメだぞ。
トモリ
はーい。
ヒカル
……あそこから見ると一番綺麗に見えるようにデザインしたんだ。
一番登りやすいのも、俺があそこに登って夜を過ごすためだからな。
アカリ
あ、そうだったんですか。
ヒカル
お父さん。トモリちゃんは絵が上手ですか?
テル
絵、ですか? 絵はそれほど……。ただ、積み木やブロック遊びが好きみたいで。
ヒカル
きっと、空間を認識する能力が高いんでしょう。
テル
トモリ、褒められてるぞ。
トモリ
そうなの?
アカリ
じゃあ将来はイルミネーションデザイナーかな?
トモリ
違うもん! トモリはね、お父さんと同じ、サンタクロースになるんだもん!
アカリ
サンタクロース?
テル
はっはっは。
ヒカル
サンタクロースなんですか?
テル
まさか。トモリ、お父さんは、郵便局員だろ。
トモリ
なんでみんなに内緒にしてるの?
テル
トモリ。いい子にしないと、連れてってやらないぞ。
トモリ
え! やだ!
テル
なら、余計なことを言わないで静かにしていなさい。
アカリ
ふふ。面白い。
ヒカル
もしもお父さんが、サンタクロースなら、この東の空がオススメですよ。
テル
東の空?
ヒカル
ええ、トモリちゃんが登った壁の、もっと向こうの、もっと高く。
そこから見えるこの街の明かりは、きっと格別です。
アカリ
そんなに高くからチェックしたんですか?
ヒカル
バカ。そんなことできるわけないだろ。計算だよ、計算。
テル
そうですか。郵便局員がそこまで行けるかはわかりませんが。
ヒカル
ふふふ。行けそうなら、ぜひ。
アカリ
あ、ヒカルさん、そろそろライトアップの準備を始めないと。
テル
トモリ。俺たちもそろそろ行くぞ。
トモリ
うん。
***
ヒカル
イルミネーションを見るのは、基本的に歩行者だ。
だから通常、地面から見たときが最も美しくなるように設計されている。
もちろん、この町の夜も。だけどせっかくのクリスマスだ。
もう一つの視点を意識して作るのも、ロマンがあっていいじゃないか。
アカリ
東の空から見ると、どんなふうに見えるんですか?
ヒカル
そりゃ、東の空に行かなきゃわからんよ。
アカリ
もう、教えてくれたっていいのに。じゃあ、点灯します。3、2、1、ライトアップ!
街に明かりがともる。
人々の喜ぶ声がする。
町の人々
うわー、キレー。
町の人々
すごーい。
町の人々
見惚れちゃう。
町の人々
美しいなあ。
町の人々
おい、東の空になにか飛んでないか?
町の人々
本当だ! あれはもしかして……。
町の人々
サンタクロースだ!
***
夜空を飛ぶテルとトモリ。
トモリ
すごいすごい、お父さんすごーい!!
テル
しっかり掴まっていろよ、トモリ。
トモリ
うん。
テル
ええと、どこから見るのがオススメだったかな?
トモリ
ほら、もうすぐ。ここ! ほら、見て、お父さん!
テル
はっはっは、こりゃすごい。
トモリ
やっぱり、絶対そうだと思ったんだー! おいしそー!
テル
トモリ、上から見るとケーキになっているって気づいてたのか?
トモリ
そうだよ! あーあー。ロウソクのところ、消しちゃった。
ヒカルさん、アカリさん、本当にごめんなさい。
テル
そうだぞ。二人にもちゃんとプレゼントを送らないとな。だけど、トモリは今日が誕生日だ。
ちょうどロウソクに当たるあの電球を、消すにはふさわしい女の子だったかもな。
トモリ
ハッピーバースデー!
テル
ハッピーバースデー! さあ、今夜はまだまだ忙しい。飛ばすぞー!
トモリ
イエー!
END